それまでの経済的な拡張路線が頭打ちとなりながならも膨張し続けざるを得ない大国同士が、それぞ

前の日記より

ナショナリズムの衝突

しかし、状況が不利であっても、インドは中国の威圧を正面から受け止めざるを得ません。そこには、中国と同様、そして日本を含む西側先進国と同様、インドでもナショナリズムが高まっていることがあります。

ヒンドゥーナショナリズムの高まるインドでは、少数派ムスリムなどに対する嫌がらせや襲撃が横行していますが、モディ政権はその取り締まりに消極的。その一方で、政府に批判的な言論は取り締まりや監視の対象になっており、6月には政府に批判的な報道が目立った、インド最古のテレビ局NDTVが中央情報局の家宅捜索を受け、これに抗議するジャーナリストが全土から同社に参集しました。

高まるナショナリズムのもと、先述の一帯一路国際会議に関しても、多くのメディアで参加するべきでないという論調が目立ったことが、インド政府代表団の不参加を後押ししました。ただし、このインドのナショナリズムが、中国の重んじるメンツを潰す結果になったことも確かです。

ブータンに対する中国の威圧的な態度に関しても、インドでは中国の拒絶反応を限定的に抑えながらも、少しずつ切り落としていくサラミ戦術への警戒が広がっています。なかには、インディアトゥデイのように中国のタンカーの多くが通るマラッカ海峡を封鎖するべきといった強硬な意見も目立ちます。こうした世論は、インド政府をして、後には引けなくしているといえるでしょう。

こうしてみた時、習近平体制のもとで中国が膨張する傾向を強め、モディ政権のもとのインドでナショナリズムが高まるなか、ブータンをめぐる緊張は抜き差しならないものになる可能性が小さくありません。

それまでの経済的な拡張路線が頭打ちとなりながならも膨張し続けざるを得ない大国同士が、それぞれナショナリズムに支えられ、残りわずかな土地をめぐって対決する状況は、バルカン半島を挟んでロシア帝国とオーストラリアハンガリー帝国が対峙していた、第一次世界大戦前夜を思い起こさせます。中印対立の行方はブータンが幸せの国であり続けられるかだけでなく、中国の一帯一路にとっての試金石にもなるといえるでしょう。

六辻彰二

国際政治学

博士国際関係。アフリカをメインフィールドに、米中関係から食糧問題、宗教対立に至るまで、分野にとらわれず、国際情勢を幅広く、深く、分かりやすく解説します。

MUTSUJIShoji

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